iPhoneの設計責任者が辞任背後にジョブズCEOとの確執も

WorldRich.net 10-08-12 ウォール・ストリート・ジャーナル

  米アップルは7日、同社の多機能携帯電話「iPhone(アイフォーン)」の設計を統括していたハードウェアエンジニアリング担当のマークペーパーマスター上級副社長が退社したと発表した。


 同社の広報担当は詳細については明らかにしなかったが、消息筋によると、背景には最新機種アイフォーン4の受信障害のほかに、同社のスティーブジョブズ最高経営責任者(CEO)との確執があったもよう。

 
 ペーパーマスター氏(49)は、1年3カ月前に米IBMからアップルに移ったばかりだった。同氏はIBMでパワーPCチップ事業を統括し、競合他社に転職しない契約を結んでいたため、IBMは当時同氏がアップルに入社できないと主張し、解決に数カ月を要した。
 

 アイフォーン4の受信トラブルが同氏の退社にどの程度影響したのかは不明だ。アップルの主力製品である同機種は、受信障害、白モデルの製造の遅れなど、相次いで問題に見舞われた。消息筋は、同氏の退社は企業文化の不一致が主因だと語っている。


  同筋によると、ペーパーマスター氏は数カ月前にジョブズCEOの信頼を失い、意思決定プロセスから外されたという。さらに、同氏はアップルで期待される創造的な思考をするタイプの人物ではなく、上級幹部であっても担当分野を詳細にわたって知り尽くし、多くの業務を、ほかに任せるのではなく、自ら直接対応するのが当然とされる同社の企業文化になじめなかったという。消息筋のひとりは、ペーパーマスター氏がアップル社内での駆け引きに苦労していたことを明かした。
 

 米紙ニューヨークタイムズが初めに報じた今回の退社について、ペーパーマスター氏本人はコメントしていない。


 アップルも退社理由を明らかにしていないが、アナリストらはペーパーマスター氏がアイフォーンのハードウェアを担当していたことから、退社のタイミングに疑問を感じている。


 グリーチャーのアナリスト、ブライアンマーシャル氏は「(ペーパーマスター氏が以前在籍していた)IBMにはアンテナ技術がない」と指摘。パイパージャフレーのアナリスト、ジーンマンスター氏も、「時期的にみて、アンテナ問題と関係がないとは考えにくい」と述べる。


  アイフォーンは、今年の4-6月期決算で、アップルの売上高全体の34%、53億ドル(約4529億円)に達したと発表した。


 6月後半に発売された最新機種のアイフォーン4には同社らしくないトラブルが相次ぎ、特にアンテナの設計に関連する受信障害は批判を浴びた。同機種は現在も供給不足の状態が続いており、出荷は3週間程度遅れている。


 関係筋によると、アップルは1年も前にアンテナの設計にリスクがあることを認識していた。それでも同機種の開発を進めることを決定したのは、ペーパーマスター氏ではなく、ジョブズ氏だったという。


 ペーパーマスター氏のアップル退社は、他社から来た人材が同社で成功することの難しさを示している。他社から移った幹部で旧コンパックコンピューター出身のティムクック最高執行責任者(COO)、小売り大手ターゲット出身の直営店担当上級副社長ロンジョンソン氏は活躍しているが、それ以外は順調とはいえない。例えば06年以降アップルがIBM、オラクル、インテルなどから採用した数名の法律顧問はすでに解雇されている。


  ペーパーマスター氏の前任者は、アップル成長の原動力となった携帯音楽プレーヤーiPod(アイポッド)事業を中心となって立ち上げたトニーファデル氏だった。


 ペーパーマスター氏がアップルで業務を開始した09年上期は、ジョブズ氏が肝臓移植手術のために長期療養に入っていた時期だった。当時アップルの幹部は現在より意思決定の自律性が高かったため、実務に直接携わる経営スタイルで知られるジョブズ氏が復帰したとき、ペーパーマスター氏は十分な準備ができていなかった可能性があると消息筋は説明する。


  同社の広報担当者によると、同氏の職務はコンピューター・エンジニアリング担当のボブ・マンスフィールド上級副社長が引き継ぐ。6月初旬、アイフォーン4のプロモーションビデオにも登場したマンスフィールド氏は、タッチスクリーンやチップの「A4」など携帯端末技術の一部を既に担当している。


「終わらないアップルの挑戦」の関連記事はこちら

 




前の文章:
次の文章:

関連リンク

今日の市場

特別な紹介